世界を走り倒す旅行記 1

自転車による五大陸走破ラウンド1

ニカラグアの出来事 : カメラ盗難 前編

with 2 comments

ニカラグア。
重債務貧困国。
治安の悪さでも有名。
でも実際に入国してみると、他の中米諸国とあまり変わりない。平和だ。まあ、そんなもんだろう。今までだって、人づてに聞いた情報はあまり当たってなかった。皆、どこどこの国は危ない、といった噂話が好きで、知らず知らず誇張されていくのだ。あるいは、犯罪や紛争のニュースだけがクローズアップされて伝わり、他国の人々に偏見を持たせてしまうのだ。何事も、自分の目で確かめてみなければわからない。
 
首都マナグアに着いた。ホテルに荷物を置いて、自転車でネットカフェに行き、それからスーパーに買い物に行った。
中南米のスーパーでは、バッグを持ちながら買い物することはできない。入口付近に荷物預かり所があり、そこで自分の荷物を預けて、手ぶらの状態で買い物しなければならない。万引き防止のためだか何だか知らないが、あまり効果があるとは思えない。
僕は自転車用の小さなフロントバッグに、カメラ、MP3、電子辞書、地図、日記などの「準貴重品類」をまとめて入れておいて、いかなる時も手離さないようにしていた。だが、中南米で買い物する時だけは例外だった。はじめはバッグを預けることに抵抗を感じていたが、中南米ではこれが常識なので、次第に何も感じなくなっていった。
 
いつものように買い物を終え、自分のバッグを受け取り、そのままレストランへと向かった。
料理がくるまでの間、写真の編集でもしようかなとバッグを開けると、
・・・ない。
カメラがない。他の物は無事だが、カメラだけがない。僕は整理整頓にはうるさい方なので、いつもと違う場所へしまうことはない。
瞬時に、スーパーでやられた、とわかった。僕は取り乱しながら、レストランの主人に事情を説明し、「必ず戻ってくるから」と言って自転車に乗り、ダッシュでスーパーへ向かった。
 
走りながら、最後にカメラを見た時から今までの記憶を冷静にたどってみた。やはりスーパーで盗られたとしか思えない。落としたり、すられたり、どこかに置き忘れたり、といった可能性はゼロに等しい。
 
スーパーに戻ると、荷物預かり所の店員はすでに別の者にチェンジしていた。事情を説明すると、その若い男性店員は、「ああ、そう」みたいなことを言った。僕は彼がどういう対応をしてくれるのかと待っていたのだが、彼はそ知らぬ顔をして他の客の荷物のやりとりをしている。えっ、まさか今の「ああ、そう」で終わりだったの!?
だめだこいつは話にならん、と思い、もう少し地位の高そうな感じのおばさんの店員をつかまえた。しかし、またしても無視に近い態度をとられた。
ここまで侮辱されて怒らない人はいないだろう。僕は近くにあったカートを蹴った。
 
「責任者を呼べ!」(←日本語)
 
店中が一瞬静まり返り、注目を浴びた。
「責任者を呼べ」という日本語が通じるわけがないのだが、その一言で責任者らしき者が出てきた。今回の旅の経験でわかったことだが、本当にアタマにきた時は、下手な言葉であれこれ言うよりは、日本語でも何でもいいから、感情をぶちまけてしまった方がよっぽど通じるのだ。
他に3人の店員がついてきた。その中には僕が荷物を預けた店員もいた。ひとり英語をしゃべれる者がいたので、通訳してもらいながらの話し合いとなった。
 
色々と話したが、結局彼女たち(全員女だった)は、「ここにあなたのカメラはないし、ウチの店員がカメラを盗ったという証拠もないでしょう。」の一点張りだった。たしかに証拠がなければいくら話しても無駄だ。こんな国には防犯カメラなんてものもないだろう。

僕が荷物預かり所の内部を見せるよう要求すると、通訳が、
"Sure, please, please."と得意気に言いやがった。
カメラを盗られたことよりも、こいつらの態度に対して腹が立ってきた。
期待はしていなかったが、荷物預かり所の中にはカメラはなかった。
このスーパーに来る前はどこにいたのかと聞かれたので、インターネットカフェにいたと答えた。すると一同、納得したように、
「あー、じゃあインターネットカフェに行きなさい。」と言いやがった。

まったく、イヤなやつらだ。ネットカフェにいた時はバッグはずっと僕の視界の範囲内にあった。バッグが手元から離れたのはここだけなんだよ。
そもそも、なんでこいつら逆ギレ気味になってんだ。まるで僕がインネンをつける悪者であるかのような扱いだ。本当に無実なら、少しは協力的な姿勢を見せてくれてもいいもんだ。
 
なんでもいいから返してくれ、という気持ちだった。ただのカメラじゃないんだ。アラスカからここまでの大切な思い出がつまっているんだ。金で買い換えられないものを盗るのは本当に勘弁してほしい。
 
「ネットカフェには行かない。警察に行く。」
彼女たちの表情が少し変わった。さすがに警察沙汰は困るのか。でもこれ以上話してもラチがあかないし、僕としては他に頼るものが思い当たらなかった。
去り際に僕は、「ふざけやがって。この盗っ人どもめ。」と日本語で捨てゼリフを吐いた。すると通訳が、「中国語はわからないわ。」と言った。
 
「中国語じゃねえよ!日本語だ!バーカ!」
 
つづく
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

Written by Ryo

2008年3月7日 @ 5:57 午後

カテゴリー: 出来事

2件のフィードバック

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  1. うーわーショックですね :(
    私はオーストラリアでとった写真が入ってるメモリーカードが壊れたんですけど、
    なんとか修復できました。5万円くらいとられたんですけどね。。。
    お金には変えられないから :(
    でもぬすまれちゃもともこもないですよね。。。

    Chihiro

    2008年3月8日 at 9:44 午後

  2. メモリーカードの修復で5万円は痛いですね。
    カメラひとつ買えちゃいますね。
    でも、僕もやはり、思い出を盗られるぐらいなら現金を失った方がまだいいと思います。
    盗難にあった数日後、友人から、「思い出は写真より胸に刻め」というメールがきました。

    Ryo

    2008年3月9日 at 7:09 午後


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